プーチンのロシア
『プーチンのロシア』ロデリック・ライン、ストローブ・タルボット、渡邊幸治著 長縄忠訳/日本経済新聞社
日米欧を代表する外交官、ロシア専門家によるロシア論。思ったより堅いな内容で読むのに少し時間がかかってしまった。
先日のアレクサンドル・リトビネンコ氏の毒殺疑惑、少し前のアンナ・ポリコトフスカヤ 氏など、多くのジャーナリストが暗殺されているという物騒な噂が耐えないこのところのロシア。
この本はどちらかというと、民主化、あるいは経済の発展という視点から見たプーチン以後である。
エリツィン以後、ほとんど知られていなかったプーチンの登場。2000年〜2003年にかけては、確かに民主化が進み、国民も目に見えて豊かになった。
G7(先進国首脳会議)にも、ロシアは1998年から正式に参加するようになり、G8(主要国首脳会議)になった。
ところが、あたかも大国に返り咲いたかのようなロシアのその後の経済事情は?
プーチン以後のロシアに投資しようとする多くの外国人投資家は、相変わらず蔓延る汚職と、厄介な書類手続きに絡む行政的障壁に辟易している。
極東はひどい状態。人口は明らかに減っており、平均寿命でさえ短くなっているというのだ。
石油やガス、豊富な資源をもちながら「北のサウジアラビア」に過ぎない資源輸出国であるという認識をロシアのエリート達は共有しているともある。
恐るべき「世界の工場」として台頭する中国、ITを進めるインド、比して、ロシアの市場経済は危機感を免れ得ない。
「ロシアの対外政策の最優先事項はロシアだ。」
そう、ソビエト連邦の崩壊は何より経済の破綻だったのである。