Linux Kernel(2.6)の実装に関するメモ書き

例外処理


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例外処理のメモ。対象CPUはi386。

例外処理

例外ベクタテーブル(IDT)

idt_table[256]にIDT(Interrupt Descriptor Table)が登録されている。IDTはtrap_init()で初期化する。IDTRレジスタはidt_tableを指すがこれは起動時にstartup_32_smpで初期化される(lidt idt_descr)。

Interrupt Descriptor Table
idt_table[256] <---- IDTR Register
+-------------+
| Descriptor |
+-------------+
| |
+-------------+
| |
:
+-------------+
| |
+-------------+

各Descriptorにはフォーマットによって以下の種類に分けられる。
Task gate:
Interrupt gate:割り込みハンドラへのポインタを保持
Trap gate:例外ハンドラへのポインタを保持

Interrupt gateとTrap gateは同じ様なものだが、Interrupt gate経由でハンドラに飛んだ場合は、EFLAGSレジスタのIFフラグをクリアして割り込みが抑止される。

各ディスクリプタを設定するルーチンには以下のものがある。
set_intr_gate()
set_system_intr_gate()
set_trap_gate()
set_system_gate()
set_task_gate()


表1 idt_tableの設定内容(一部)
ベクタ番号種類
Descr.形式
エントリルーチン
0
0除算Trap
divide_error
8
ダブルフォルト
Task
doublefault_fn (*1)
14
ページフォルトInterrupt
page_fault
80h
システムコール(int80h)
Trap
system_call

(*1) このエントリはTask Gateなのでハンドラには直接ジャンプしない。このTask GateにはTSSセグメントセレクタにGDT_ENTRY_DOUBLEFAULT_TSS(31)が設定されており、GDT_ENTRY_DOUBLEFAULT_TSSで定義されるTSSに飛ぶ。GDT_ENTRY_DOUBLEFAULT_TSSのTSS実体はdoublefault_tssで.eipにdoublefault_fnが設定されているため、最終的に本ハンドラに飛ぶ。


割り込みのエントリポイント

(初期化)
IRQ0,1,...を例外ベクタ32以降にマッピングするように
割り込みコントローラを設定する。
(i8259.c::init_8259A())

例外ベクタ32以降のエントリを割り込みハンドラ用に設定する。

i8259.c::init_IRQ()
idt_table[]の例外ベクタ32〜のエントリを
set_intr_gate()で設定

例外ベクタ32〜のエントリがirq_entries_start[IRQ#]
を指すように設定される。


entrt.Sの関連テーブル(コンパイル時に構成される)

entry.S:inerrupt        entry.S::irq_entries_start
+------------+ +-----------------------+
| |--------->| pushl $vector-256 | vector = 0
+------------+ | jmp common_interrupt |
| |----+ | nop |
+------------+ | +-----------------------+
: +---->| | vector = 1
: | |
| |
+-----------------------+
:
:



(ハンドラ呼び出しの流れ)
1. 割り込み発生
(割り込みの例外ベクタは32以降に設定されている)
2. IDTの該当エントリに登録されているアドレスにジャンプ
(irq_entries_start[IRQ#]にジャンプ)
3. 一旦common_interrupt:に飛んでdo_IRQ()へ
4. irq_desc[]に登録されているハンドラへ
(request_irq()で登録される)


システムコールのエントリポイント

entry.S::system_call

例外ハンドラと同様にtrap_init()で設定

sys_call_tableに各種システムコールのエントリポイントが
並べられている。

[システムコールからの戻り]
1. システムコールからリターン
2. syscall_exit:
thread_info.flagsにbitが立っていれば
syscall_exit_workにジャンプ
3. restore_all:
レジスタを元に戻す。
iret

4. syscall_exit_work:
TIF_SYSCALL_TRACE|TIF_SYSCALL_AUDITが立っていなければwork_pendingへジャンプ

5. work_pending
TIF_NEED_RESCHEDが立っていればschedule()をコール
restore_allへジャンプ




[割り込みからの戻り]
1. do_IRQ()からリターン
2. ret_from_intrへジャンプ
3. スタック上のCS Reg.のRPL(RequestPrevilegeLevel)から
戻り先のPrevilegeLevelをチェックする。
RPL 0: 戻り先がカーネルモード
resume_kernelへジャンプ
(CONFIG_PREEMPTが未定義ならrestore_allへ)
RPL 0以外: 戻り先がユーザモード
resume_userspaceへジャンプ

4. resume_kernel: - 必要ならPreempt
preempt_count!=0ならrestore_allへジャンプ
TIF_NEED_RESCHEDがセットされていなければrestore_allへジャンプ
preempt_countにPREEMPT_ACTIVEを設定して
schedule()コール - Preempt
preempt_countを0に戻す

5. resume_userspace:
thread_info.flagsにTIF_SYSCALL_TRACE|TIF_SYSCALL_AUDIT以外の
bitが立っていればwork_pendingへジャンプ
そうでなければrestore_allへジャンプ

6. restore_all:
レジスタを元に戻す。
iret

7. work_pending
TIF_NEED_RESCHEDが立っていればschedule()をコール
restore_allへジャンプ




最終更新 2006/06/24 15:11:07 - kztomita
(2006/03/27 12:49:42 作成)


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